研究者業績

近藤 暁夫

コンドウ アキオ  (暁夫 近藤)

基本情報

所属
愛知大学 文学部 歴史地理学科 教授
学位
博士(文学)(2010年3月 立命館大学)

J-GLOBAL ID
201401003912119936
researchmap会員ID
B000234688

外部リンク

所属教室のホームページ(管理人:近藤)
http://taweb.aichi-u.ac.jp/geogr/


委員歴

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論文

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書籍等出版物

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講演・口頭発表等

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  • 近藤 暁夫
    日本地理学会発表要旨集 2018年
    1. 問題の所在<br><br> 近年日本では「地政学」を名乗る一般書・入門書が陸続と出版され,『人文地理』の学界展望でも紹介されるに至っている.これらの大部分は,学術的な論究よりも著者の政治的主張や解説が前面に出ており,学術書と区別して「論壇地政学」(高木 2017)や「ポップ地政学」(土佐 2017)と括られる.日本地政学の負の歴史を背負う我々地理学界が,今更論壇地政学に関わることは憚られるべきだが,他方で昨今の「地政学ブーム」といわれる出版・言論の状況に沈黙を保つのもいささか無責任であろう.<br><br> そこで本報告では,「ポップ地政学」の一般書に掲載されている地図図版に着目し,その表現や内容の科学的検討を行いたい.どのような本であれ「地政学」を名乗る以上は地図を重視しているはずであり,また地図の客観的検討に限定すれば地政学論壇に参加しない形で地理学の立場からの言及も容易となる.また,従来の批判地政学における地政言説分析の問題点とされてきたテクスト偏重の傾向を埋める役割も期待できよう.<br><br><br><br>2. 検討の手順と方法<br><br> 書名に「地政学」を含み,2017年12月現在インターネット書店で入手でき,かつ価格が2000円以下の書籍のうち,訳書や復刻本,ムック等を除く39冊を「地政学一般書」として抽出し,そこに掲載されている地図(主題図)の内容と表現について評価付けを行った.評価は次の基準で行った.①地形や領域の表現・表記などに,高等学校地図帳に記載されている「事実」レベルでの誤りはないか.②地理学の一般書にふさわしい水準の主題図表現になっているか.例えば方位記号や距離尺を欠いていないか.<br><br><br><br>3. 結果と展望<br><br> 対象とした書籍に掲載されている地図の枚数は,地図帳形式や「図説」を名乗る数冊を除けばまちまちで,10枚以下の本も少なくない.例えば,地政学論壇の第一人者とされる佐藤優の著書では対象とした5冊合計で13枚の地図しか掲載されていない.ハウスホーファー(1938)『太平洋地政治学』には47枚,マッキンダー(1942)『デモクラシーの理想と現実』には32枚の地図(主題図)が掲載されていることを考えると,地政学本としては異例の少なさといえる.渡部昇一『世界の地政学的大転換を主導する日本』(徳間書店, 2016)や黄文雄『地政学で読み解く没落の国・中国と韓国 繁栄の国・日本』(徳間書店, 2017)に至っては地図が1枚も掲載されておらず,これなどはマッキンダーらが体系化した地政学とは別の世界に属するものといえよう.<br><br> これらの書籍に掲載されている地図(主題図)の表現や内容については,基礎的な事実レベルでの誤りが多く,ほとんど科学的な批判に耐えられる水準にない.例えば,山内昌之・佐藤優『新・地政学』(中央公論新社, 2016)では「南スーダンの位置にケニアが描画」され,船橋洋一『21世紀地政学入門』(文藝春秋, 2016)では「竹島が対馬海峡に描画」され,日本再建イニシアティブ『現代日本の地政学』(中央公論新社, 2017)では「チェコとスロバキアが合体」している.残念なことに,対象とした39冊のなかで,10枚以上の地図を掲載し,かつそれらすべての地図が一般的な地理学の書籍において必要される地理的知識と地図学の成果を踏まえた主題図表現の水準に達しているものはなかった.少なくとも,掲載されている地図の内容が高等学校地理修了水準未満の誤りを多々含んでいる以上,これらの書籍が「地理を下敷きにした科学」の名を名乗ることは許されないであろう.<br><br> 土佐(2017)は「ポップ地政学」が地図という視覚情報を使うがゆえに,難解になりがちな地政学批判よりも一般社会への訴求力が強いことを懸念しているが,それはポップ地政学が用いる地図が高度なものであることを前提にしている.質の低い地図の大量掲載という事実は,適切に指摘さえすれば,逆に「ポップ地政学本」のレベルの低さを訴求する.日本のポップ地政学は,少なくとも用いる地図に関してはほとんど科学的な批判に耐えられる水準にない.地理学の仕事は,ポップ地政学の批判だけでなく,彼らがせめて高校レベルの地理と地図の知識を習得して出直すことができるよう,教育的見地から優しく諭すことだろう.<br><br>【文献】<br>高木彰彦 2017. 学界展望 政治地理. 人文地理69: 317-321.<br><br>土佐弘之 2017. 地政学的言説のバックラッシュ―閉じた世界における不安と欲望の表出―. 現代思想45-18: 60-70.
  • 近藤 暁夫
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2016年 人文地理学会
  • 近藤暁夫, 鈴木晶子
    日本地理学会発表要旨集 2015年9月10日
  • 近藤 暁夫, 鈴木 晶子
    日本地理学会発表要旨集 2015年 公益社団法人 日本地理学会
    1. 研究の目的<br><br> 経済循環が,大きく生産分野,流通分野,消費分野の連携で成り立っている以上,経済地理学においても,この三者三態の空間的特徴の総体的な把握が望まれる。この中で,近年農業分野において六次産業化の掛け声のもと,生産・加工・流通・消費を一連のまとまりとして議論,実践する動きが顕在化していることが注目されよう。現実に,各地で生産者と消費者を架橋する施設として直売所が急増している。今回はその中でも既往研究のほとんどない「インショップ形式の農産物直売所」を取り上げる。<br> インショップ形式の農産物直売所とは,スーパー等の量販店や生協の店内に開設し,少量多品目の農産物やその加工品を周年販売する半独立のコーナーを指す。近年,全国的にインショップが急速に売上額を増やしているが,その小規模性と店舗内の一コーナーという位置から,インショップの全国的な実態や実績をまとめた資料は未整備で,売上額の調査などもなされていない。<br> 本研究は,静岡県磐田市内のJA系列のスーパーマーケット「A店」とその中に設置されているインショップ形式の農産物直売所を取り上げ,店舗,生産者,消費者の検討から,インショップの存立を支える地域的な基盤の抽出を目的とした。<br> <br><br>2. 研究の方法<br><br> 生産者としてインショップへの農産物出荷者34名,流通者としてA店の関係者,消費者として来店者397名に聞き取りとアンケート調査を実施した。なお,生産者には営農の実態と直売組織に参加した理由,インショップに出荷する作物と他の流通形態の作物の使い分け等を,流通者にはインショップの設立背景や運営方法,店舗経営全体の中でのインショップの役割等を,消費者には購買実態とどのような時に競合店舗ではなくA店とインショップを選択・利用するのかを訪ねた。そして,これら3者の動向をもとに,インショップ型の農産物直売所の存立を可能とする地域的な基盤の検討を行った。<br><br> <br>3. 研究の結果<br><br> A店内の直売所への農産物の納入者は,店舗から3㎞圏内に位置する農家である。このような圏的な囲い込みが成しえたのは,A店がJA系列の店舗であり,地域の農家とのつながりがもともとあったことと関係している。しかしながら,A店が属する地域農協に所属する農家自体は3㎞より遠方にも多く居住していることから,日常的に店舗まで農産物を納入可能な範囲として3㎞がひとつの目安になっているといえよう。多くの場合,彼らは,友人や農協等による勧誘をきっかけに,通常の農協への出荷以外の副次的な農業収入を得たいと考えて,産直に参加した。農家の多くは高齢層で,売れ残った商品は自家で処理する。また,農産物の納入等でA店に来訪する折に店内で購買を行うこともまれではない。<br> A店の側は,農産物直売所自体の収益は売り場面積の割に高くないものの,競合する店舗に対して絶対的に差別化できる商品であること,来店者が同時に食料品等の他の売り場の商品の購買を期待できることから,直売所の充実に積極的である。<br> 消費者は,店舗から半径2㎞程度の圏内を中心に来店している。その多くは,食料品全般の購入のために来店する主婦層であるが,多くの場合,インショップの商品も同時購入しており,直売所の存在が店舗選択において一定のウェイトを占めている。<br> このように,A店をめぐり,生産者は自家消費の余裕分を出荷することで無理なく副収入を得る道が開け,流通者は集客の目玉を得ながら売れ残りのリスクを回避できる。消費者は農家が食べるのと同じ新鮮で安心な野菜を手軽に入手できる。このような,インショップを中心としたごく近距離間の「地産池消」の構図により,当地の農産物直売所は存立している。これには,工業地帯に位置し,混住化が進行している磐田の地域的条件が大きく関係している。他地域においても,一律横並びの整備ではなく,インショップ,独立店,道の駅など,その地域性に最も合致するような,柔軟な農産物流通の形態を探る議論が求められる。
  • 近藤 暁夫
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2015年 人文地理学会
  • 近藤 暁夫
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2014年 人文地理学会
  • 近藤 暁夫
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2013年11月10日
    学区別に刊行される住宅地図は、日本で独自発達した形式の地図であり、また、単純な部数において屈指のものと考えられる。これらの地図は、紙面への広告料金によって無料配布されているが、本報告ではそれら広告主の属性と広告掲出圏を検討した。京都府内で刊行されているすべての住宅地図(179図幅)を対象に掲載されている広告を抽出したところ、広告数は9,527件、広告主は7,648件であった。この広告主数は、地図の刊行範囲に立地している全事業所の約1割に該当し、広告媒体としての活用率が非常に高いことを示す。広告主の8割は事業所が立地する図幅にのみ広告を掲出しており、一枚物の学区別住宅地図が近隣商圏レベルのきわめてローカルな空間単位において活用される広告媒体であることを示す。
  • 近藤暁夫
    人文地理学会大会研究発表要旨 2012年11月17日
  • 近藤 暁夫
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2010年 人文地理学会
    企業・事業所による、消費者へ向けた様々な購買行動促進のための働きかけの中で、屋外広告は、消費者の事業所への来訪時の誘導のための情報伝達媒体として、需給接合の最終段階に用いられている。屋外広告による直接的な消費者の誘導範囲は、事業所の重要な営業範囲とみなすことができるとともに、それら宣伝活動が範囲内の消費者の購買活動に対して一定の影響を与えていることが期待できる。<BR> 本報告は、中京大都市圏で営業する小売店と対個人サービス事業所による屋外広告の広告圏の形状を分析し、消費者に対する企業・事業所の宣伝活動の実態を明らかにすることで、大都市圏における商業活動の空間的な一側面を明らかにしようとする試みである。<BR> 分析に用いるデータは、2004年1月~4月に中京大都市圏で実施した屋外広告の実態調査で収集した約2万件の屋外広告と約7千件の広告主(事業所)を基礎とする。その中から、小売業と対個人サービス業(飲食業と不動産業を含む)の事業所で、10件以上の広告の掲出が確認でき、かつ調査地域の末端に位置しておらず広告の掲出範囲を事業所を中心に面的に把握できる116件の広告主と、それらが掲出している屋外広告を分析の対象として抽出した。<BR> 広告圏の形状は、事業所ごとに掲出している屋外広告の立地点を結んだ凸包と、凸包の外接円を作成し、両者の面積比を求めて検討した。同様に、広告の分布重心と事業所との距離を測定し、両者の位置関係を検討した(第1図)。その上で、屋外広告の形状や広告上に記載している情報に着目し、広告圏の広さや形状、掲出している屋外広告の属性、広告主の業種の関係を検討した。<BR> 屋外広告を結んだ凸包(広告圏)の範囲は、平均して30㎢近いが、業種による面積の大きなばらつきがみられる(第1表)。広告圏の凸包比は、正六角形(凸包が正六角形の場合、凸包比は約0.83になる)の半分以下に留まり、面としての歪みは小さくない。ただし、広告の分布重心と事業所の立地点は比較的近く、広告の分布は基本的に事業所を中心とした求心的な構造を示している。<BR> 野立看板や壁面広告など大型の広告を多く掲出する広告主は凸包比や凸包面積が大きく、電柱広告広告や街灯柱広告など小型の広告を多く用いる広告主は、広告の掲出総数が多い(第2表)。大型の屋外広告は、距離や時間に関する情報を掲載して、広範な範囲からの事業所への誘導に、小型の屋外広告は、集中的に展開させて導線の構築や消費者への印象付けを狙うなど、屋外広告は形状の大小によって役割を分担されつつ活用される。<BR> 業種別の広告展開には、業種ごとに特有の傾向が確認でき、これは、それぞれの営業内容や商圏の性質との関係を示唆する。小売業は、凸包の面積に比べて掲出広告数が少なく、広範な範囲に誘導用の屋外広告を分散させている。医療施設には、事業所を中心とした狭い範囲に住所などの位置情報を掲載した広告を集中して展開させる、宣伝を重視した広告展開がみられる。宿泊サービス業と不動産業は、ともに広範な広告圏をもつが、宿泊サービス業の広告展開は、広告に住所を掲示せず、大型の屋外広告を展開させるなど、より事業所への誘導を重視した傾向がみられる。娯楽サービス業も広告への住所の提示が少なく、直接的な事業所への誘導を志向した広告展開といえる。飲食業は、凸包の面積、凸包比が極端に小さく、広告の分布中心から事業所が離れている。広告を面的に広範に展開させることは少なく、事業所直近部での誘導に特化した線状の広告展開に特徴がある。<BR> このように、事業所から消費者に対して宣伝や誘導が行われる空間的範囲は、必ずしも同心円状や六角形状の範囲でなされてはいない。この背景には、人口の偏りなどのほか、それぞれの企業・事業所の主体的意識的な宣伝戦略の存在が考えられる。これらの企業・事業所単位あるいは業種単位でみられる広告宣伝の内容の相違とその空間的な歪みは、企業・事業所の主体的で意図的な消費者への働きかけが、消費者の購買行動やその積み重ねによる商圏の形成プロセスに一定の役割を果たしうることを示唆する。今後、消費者の広告への実際の反応の測定など、更なる実証的追究が求められる。
  • 近藤暁夫
    日本地理学会発表要旨集 2009年3月10日
  • 近藤 暁夫
    日本地理学会発表要旨集 2009年 公益社団法人 日本地理学会
    1、研究の視点 生活者が,現在地を参照する場合や目的の地点へ到達するためには,路傍の地理情報が適宜参照され,行動の基準となることが多い.地理情報として参照されうる媒体として代表的なもののひとつに,道路標識や事業所の看板のような情報提示を目的に設置された標識類があるが,それらは多くの地点に多数存在している.いいかえれば,生活者の行動空間には,様々な主体の掲出した地理情報があふれている.しかし,これらの標識類と地理情報が誰によってどこにどういう形で提示されるのかなどについての展開メカニズムの検討は,生活者という行動主体を対象とした彼らの空間行動についての研究に比べ少ない. 標識を用いて地理情報を地域に提示する主体としては,公共性の観点から道路標識や地名標などを配置する行政組織,経営上の必要から店舗看板や店舗への案内看板を掲出する企業・事業所などがある.その中でも,顧客が事業所に来店しなければ経営が成り立たない,小売店や飲食店などの事業所は,積極的に顧客の誘導のために,特に積極的に事業所の周辺に多数の屋外広告を展開している.本報告は,そのような民間の主体が掲出する屋外広告に提示される地理情報に着目し,事業所がどのような地理情報を展開してその宣伝と事業所への誘導を行っているかを検討する.屋外広告を用いた事業所の情報提示は,消費者の店舗選択や購買行動に対して影響を与えるものと考えられることから,消費者の行動と企業・事業所側の活動との相互作用を捉える上でも有益な研究対象だろう. 2、研究対象および調査地域 本研究の調査対象は名古屋市中心部から岐阜-大垣-桑名を結ぶ東西約20km,南北約30kmの範囲の主要道路沿いに掲出されている屋外広告と,その広告主とした. 3、研究方法 【1】 研究対象地域の主要道路(総延長約600km)沿いに掲出されている屋外広告(電柱附属広告、野立看板など)を徒歩により悉皆調査. 【2】 屋外広告の掲出地点と広告主間の距離を,GISを活用して測定. 【3】 距離測定をもとに,屋外広告上の各属性の地理情報(住所,矢印,地図など)が事業所からどの程度の空間的範囲に展開され,事業所への誘導経路が構築・提示されているかを検討. 4、結果と考察 【1】 確認した屋外広告約2万1千件のうち,1万8千件に何らかの地理情報が提示されている. 【2】 広告主の7割を,医療施設,遊興・娯楽施設,宿泊施設,コンビニエンスストア,理容院など,小売業と対個人サービス業の事業所が占める.レジャー施設や飲食店などで,特に掲載される地理情報が多い. 【3】 所要時間を示す情報は広告主(事業所)から8km,住所の情報は7km,具体的な距離を示す情報は5kmが展開の限界となるなど,地理情報の属性に応じて展開される空間的範囲が異なる. 【4】 広告活動の全体としては,広告主の近傍ほど詳細かつ多量の地理情報が展開されており,情報提示量の距離逓減を確認することができる. 【5】 地理情報提示の空間範囲は,事業所側が消費者を吸引しようと直接働きかけている範囲といえ,消費者行動や商圏形成のプロセスを考える上で,これらの活動の空間的範囲と情報の内容はより深く検討されるべきである.
  • 近藤暁夫
    日本地理学会発表要旨集 2006年3月10日
  • 近藤 暁夫
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2006年 人文地理学会
    これまで地理学では企業およびその空間的拠点である事業所が各媒体の広告をどのような範囲に展開させ、取引の成立を促しているかについて広範な検討はされていない。事業所が立地したのち、立地した土地に定着していくプロセスを把握するためには、そこに介在する事業所側からの周囲に働きかける活動を検討する必要があろう。そこで、本報告では中京大都市圏の事業所を例として、事業所による広告活動が、どのような空間的な広がりをもってなされるのかを示したい。 使用するデータは中京大都市圏西部において屋外広告の掲出が確認された事業所4,000件に対して行なった広告活動のアンケート調査である。回収数260件(第1図)。媒体ごとの年間広告費・広告出稿数・広告内容・広告に期待する効果・広告の空間的な到達範囲について尋ねている。回答者の業種は医療関係が最も多く、次いで買回り品の小売店、製造業である。 それぞれの広告媒体には、媒体特有の活用法と空間的な到達範囲・投入範囲が存在する。単独で事業所が目指す取引の成立に十分な効果をもたらす広告媒体はないと考えてよい。事業所としては、これらの媒体を使い分け、また組み合わせて総体としての広告プロモーションを行ない、取引の成立を促すことになる。 事業所の広告活動は、以下のように展開される。事業所にとり、広告の達成目標は、基本的に顧客が事業所に到達し、取引が成立することである。そのため、広告は、事業所の存在、事業内容、位置を顧客に周知してもらい、事業所までの到達を促すために出される。アンケート結果をもとにモデル化すると、事業所による広告展開は以下のように4段階の重層性をもってなされる(第3図)。 第1段階:自分自身についての広告展開――事業所を中心に東海エリアの範囲にテレビまたはラジオ広告を展開。事業所(企業)の存在の広範な認知と、事業所への好感形成を目的としている。広告は事業所名など、存在自体のPRに重点が置かれ、受け手の情緒面に訴える内容が多い。年間広告費は140万円前後である。 第2段階:自身の内容についての広告展開――近隣市町村~県内には、新聞・雑誌広告を展開する。これは、事業所の存在認知に加え、事業所の業務内容や商品についての知識形成を狙い、第1段階に比して説得的・説明的な内容の広告となる。年間広告費は10~50万円程度である。 第3段階:自身の特徴および変化についての広告展開――隣接市町村~事業所の属する市町村には、チラシ広告を展開させ、イベント情報などの時事的情報を集中的に投入し、より具体的・日常的な情報伝達と来店を促す。年間広告費は約50万円である。 第4段階:自身の位置とアクセスについての広告展開――最終的な来店を促すため、事業所の位置の提示と誘導を目的に屋外広告を展開させる。最も事業所からの広告到達範囲が狭く、事業所から5km程度の範囲に収まる。最も多く広告が掲出されるのは事業所から約800mの位置である。年間広告費は約20万円。 事業所の広告展開は、遠距離においてはイメージ構築を重視した広く浅い宣伝であり、近距離になるほど具体的・説得的な情報を織り交ぜ、質量ともに集中的に情報を投入する。以上の粗放的-集約的な各段階の空間的な重層性を有する広告展開によって事業所について周知を図り、取引の成立を促す。 なお、事業所の活動内容によって、必要となる広告展開の程度は異なる。このため、すべての広告主が上記の段階すべてを踏まえるわけではなく、回答者の9割は第1段階の広告展開を、4割は第2段階目までの広告展開を行なっていない。業種ごとの広告展開の傾向でいえば、製造業は紙媒体を中心とした広範だが薄い宣伝、買回り品小売店は広告の展開範囲を絞ってきめの細かい広告投入を行なう。広範かつ多様に広告を展開させるのは不動産業、観光産業であり、最寄品小売店は広告展開に積極的でない。
  • 近藤 暁夫
    日本地理学会発表要旨集 = Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2005年3月10日
  • 近藤 暁夫
    人文地理学会大会 研究発表要旨 2003年 人文地理学会
    事業所が「社会的分業をなす場所的単位」(日本標準産業分類)である以上、その存立には社会とのつながり(空間の中で自らを位置付け、事業所の周辺諸環境との関係を構築すること)が必要である。すなわち、事業所は自らの存在を顧客などの周囲の他者に認識されなければその活動を円滑に遂行することは困難であり、その重要な位置を担うのが広告活動であると考えられる。本研究では、事業所が行なう広告活動の中でも、現実空間を媒体として社会とのつながりを媒介する活動に位置付けられる屋外広告物の掲出に注目する。 京都府丹後地方の幹線道路(国道)沿道計102kmの区間において、どのような事業所がいかなる屋外広告物をどのように掲出しているかについて、悉皆調査を行なった。その結果、事業所の存在を知らしめる屋外広告物として、本体に付属し、事業所本体を識別させることで事業所を空間上に位置付ける役割をもつ「自家用広告物」と、事業所本体に付属していないが、別の場所にある本体を指し示すことで事業所本体と広告物が置かれている場所を結びつける働きをもつ「事業所宣伝広告物」を抽出した。これらは屋外で確認できる広告物の9割以上を占めていた。また、事業所宣伝広告物の7割は沿道に本体が立地していない事業所の掲出物であった。 屋外広告物の掲出は、事業所が何らかのメッセージを空間上(の人間)に働きかけ、空間を自らの影響下に取り込もうとする行為である。それは、具体的には、自家用広告物の掲出により本体を空間上の点として位置付けることと、事業所宣伝広告物の掲出により、それを掲出した場所と本体を結びつけることで、面的な広がりのある空間を自らと関係付けることである。逆にいえば、屋外広告物の設置を通して空間が事業所に取り込まれているとみることもできよう。なお、屋外広告物を本体と切り離して展開している事業所は、全事業所の1、2割であると推定される。

担当経験のある科目(授業)

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